JUNK BOX: 藤井郷子、田村夏樹、ジョン・ホーレンベック

CD “Cloudy Then Sunny”  (2008)

必要不可欠―ステッフ、フリージャズ

「『クラウディー・ゼン・サニー』はインプロヴィゼーションの向こう見ずなアプローチに満ちている。『コンピューター・ウイルス』『ねずみのオペラ』『ワ ニが下水道をかけ回る』なんていうタイトルの曲には抵抗できない。」–スティーヴ・グリーンリー、ジャズ・タイムス(アメリカ)

「『ジャンク・ボックス』はアンサンブルのダイナミクスで創造的なクライマックスをつくる。ここでの藤井の作曲は、簡潔なやりかたで、トランペットの田村 が格調高い倍音に溶け込む辛辣なうなりを間にはさむ洒落たモチーフの美しいメロディーが出て来るにも関わらず、荒れ狂う突風と興奮とのるつぼのようだ。 」–ケヴィン・レ・ゲンダー、ジャズワイズ(イギリス)

「トリオの中で、それぞれは自由にそれぞれのやり方で感じるように音楽的に、彼女のディレクションを応える。結果、ジャズとしてはむしろ珍しい小曲集と なっている。」–フィリップ・マクナリー、ケーデンス(アメリカ)

「野太さと繊細さ、スタカートとレガートのぶつかり合いが、『ジャンク・ボックス』の『クラウディ・ゼン・サニー』を特徴づける。作編曲家、藤井はこの CDで新たな領域を足を踏み入れる。」–ケン・ワックスマン、ジャズ・ワード(カナダ)

「これらの作曲は、熟達した演奏家のみが遂行できる力強い表現の次元での応酬がない限り、危険を伴う。もし、その強度をそれぞれの演奏家の創造性のレベル で計ったら、『ジャンク・ボックス』のバーベルの重さは記録を更新するだろう。…彼らの資質ははかりしれなく、トリオの創作力のずば抜けた処理能力と彼ら の感応力の泉にまで掘り下げる。」–スーザン・フランシス、ジャズ・レビュー(アメリカ)

「『ジャンク・ボックス』の2作目はデビューCD同様に屈強で刺激的。さらに違う藤井を聴く素晴らしい機会を与えてくれる。その作曲はグループの熱烈な演 奏を促すように充分に考えられ作られている。…さらに騒々しく、新しく、変化に富み、雰囲気に富み、『ジャンク・ボックス』は、新しいCDを出すたびに成 長を続ける。」–ジェーソン・ビヴィンズ、シグナル・トゥ・ノイズ(アメリカ)

「単なる音を超越して、純粋な質感と情緒となり、3人のミュージシャンは異なる観点から同類に概念を、自由な試みからの共通した完成を頼りに表現し、豊か なストーリーを物語る。…『クラウディ・ゼン・サニー』は辛辣さから霊妙さまで含む様々な素材で構成されている。」–トロイ・コリンズ、オール・アバウ ト・ジャズ(アメリカ)

「『ジャンク・ボックス』とともにトリップしたいと思うならば、彼らと同じようにその音楽が作られた開放的な耳と精神で聴けば、見返りは大きく解き放たれ た経験ができる。…『クラウディ・ゼン・サニー』は、現時性と、トリオの瞬時の決定と選択から直接得られる力強さを持っている。」–バド・コプマン、 オール・アバウト・ジャズ(アメリカ)

「’コンインプロ’(インプロのディレクションの作曲)が決め事ではあるが、最終的には直感と情緒が語っている。」–ジェリー・デソウザ、オール・アバ ウト・ジャズ(アメリカ)

「『ジャンク・ボックス』は、激しくふりこのように揺り動くリズムのドラムとピアノの間で、田村が小さくむせび泣きまたわめきちらす、彼女の最も解放され たプロジェクトだ。このピアニストのいつもとは違う一面だが、非常に愉快な面だ。…田村と藤井は常に注目に値するが、この新しい局面は特別素晴らしい作品 だ。」カート・ゴシャック、オール・アバウト・ジャズ(アメリカ)

「これは、見事なCDだ。」–トム・ハル、オン・ザ・ウェブ(アメリカ)

「夏樹は実に破天荒だ。彼のトランペットからの広範囲の変化に富んだ途方もないサウンドで聴き手を驚愕させ続ける。「アウトサイド」なレコードとしては、 最近の記憶にある中で最も人を惹き付ける1枚。完璧に焦点が定まり、ありふれた言葉を超えて素晴らしい。」–ブルース・リー・ギャランター、ダウンタウ ン・ミュージック・ギャラリー(アメリカ)

「もし、最初に期待通りに出会えて、これを音のガイドとすれば、あなたのアヴァンギャルドへの旅は実り多いものになるだろう。」–クリス・スペクター、 ミッドウェスト・レコード(アメリカ)

「このトリオは今日最も創造的な音楽家たちで構成されている。音楽はダイナミックで、リズムは複雑だ。しかし、寸分違わぬ変化と音楽家たちのやりとりは、 ただのジャムセッションとは全く別ものだ。」–D.オスカー・グルームス、オーズ・プレース(アメリカ)

CD “Fragment” (2006)

–ジャズ・ジャーナリスト・アソシエーション トップ10―ジェリー・ドソウザ

–2006年トップ10―ビル・バートン、コーダ(カナダ)

–CDジャーナル2006年、私のベスト5CD―湯浅学

「(藤井は)ピアノで分厚いコードを叩きつけ、相棒である田村夏樹のぶっきらぼうなトランペットが緊張感を煽り、唸り声を上げる。そして、ドラマーのジョ ン・ホレンベックがレフリー役を買って出る。」–トム・ハル、ヴィレッジヴォイス(アメリカ)

「『フラグメント』は満足できるアルバムだ。」–デヴィッド・ケーン、ケーデンス(アメリカ)

「ピアニストの藤井郷子による10の作品を、トランペッターの田村夏樹と神出鬼没のパーカッショニスト、ジョン・ホレンベックと共に演奏したアルバ ム・・・。藤井は過激に感情を爆発させるピアニストだ。彼女のアタックが持つ純然たるパワーは、この音楽においてはむしろ意外な側面を与える要素となって いる。田村のアプローチはそれに見合った、頑強で厳しい、演説のようなスタイルを取っている・・・。ホレンベックは、方法論や手法に関して持ち前の思慮深 く繊細な感覚を発揮し、この力強い音楽にアクセントを与えるか装飾を施すかを明確に示すことを避け、演奏に思わぬ色彩を加えたり巧みにテンポを変えたりし ている・・・たぎるエネルギーが常に発散を求めているという感覚が失せることはない。」–ジュリアン・コウレイ、ザ ワイアー(イギリス)

 「日本最高の夫婦によるアヴァンギャルド・ジャズ・コンビがドラマーのホレンベックと手を組み、“コン=インプロ”すなわち“作曲されたイン プロヴィゼイション”の芸術に焦点を絞った新しいトリオを結成した・・・。音楽は知的なブラクストン風の擬似クラシックだったり、騒々しいAACMスタイ ルのフリー・ジャズだったり、風景を描き出すような空気感のあるインプロヴィゼイションだったり、さらには、ジャンルの概念を捻じ曲げるようなホレンベッ クのクラウディア・クインテットのポスト・モダン風だったりと、様々な方向性を示している。藤井の左手がトリオの動力源となっている・・・。田村が吐き出 す痛快なほど荒々しい、レスター・ボウイを思わせる鼻息のような音は、ロボット牛の群れが上げるうめき声のようにも、ホエザルのあえぎ声のようにも聞こえ る。ホレンベックは、静かでありながら緊張感を帯びたパルスのエネルギーを突如として増大させたかと思えば、神経質なエレクトロ・グルーヴを敷き詰めたり もする。あるいは――とても愉快な「Your Neighbors」で――彼が叩きだす、場違いなほどに今風なロック・ビートは、藤井が奏でる歪んだメンデルスゾーン風の音の断片と合体し、音楽好きの 隣人を地獄から呼び出す呪文となっている。粋で知的な音楽だ。」–ダニエル・スピサー、ジャズワイズ(イギリス)

「創造力豊かな3人のミュージシャンが手を組んで、既成の枠組みを超えた発想で演奏すれば、何が起こってもおかしくはない・・・。あらかじめ構築した部分 とコレクティヴ・インプロヴィゼイションによる部分を組み合わせた(藤井の)作品は、従来の記譜法ではなく、グラフィカルな形で書かれている。構築された インプロヴィゼイションとは、方向性は指定されているが、アーティストがその瞬間にひらめいた音を選ぶ自由はふんだんに確保された音楽で、彼らの目的はま さにジャズの定義に適うものである。キスをするようなタッチのサウンドで「At Intersection, on a Rainy Day」の幕開けを告げるトランペッターの田村夏樹は、リラックスした姿勢を見せている。しかし、雨の日に車を運転していると精神的な疲労が溜まってくる のと同様に、演奏は次第に緊張感を高めていく。「Your Neighbors」では、田村が救急車の音を真似ている。と思うのだが、そうではないだろうか? ・・・藤井のトリオは世間に目を向け、聴き手が好きな ように解釈できる形でその印象を表現している。収録曲には意表を突く楽しさがあり、繰り返し聴きたいと思わせるところがある。取っつきやすい――つまり、 グルーヴの効いたリズムの曲もいくつか用意されているいっぽう、それらとは一線を画した深遠な作品によって、聴き手に挑むような側面も持つ『フラグメン ト』は、かなりオススメの1枚である。」–ジム・サンテッラ、オールアバウトジャズ(アメリカ)

 「『フラグメント』は日常のイメージと出来事を鋭敏な感覚とユーモアで表現する。」–ヴァージニア・A. シューファー、オール・アバウト・ジャズ(アメリカ)

「緊迫感とユーモアに溢れたインタープレイがあり、70年代シカゴ前衛派の最良なる後継、と言っては今更失礼だろうが、夢も希望もある生きたジャズだ。」 –松尾史朗、ミュージックマガジン(日本)

「各楽器の特殊効果を多用し、ユーモアもふんだんに取り入れられているが、おもちゃ箱と思ったら中身は爆弾だった、という曲も。」–マーク・ラパポー ト、ミュージックマガジン(日本)

「 トリオにおける第3の車輪として藤井郷子や田村夏樹のようなプレイヤーと組むには、かなり勇気がいるに違いない・・・。ふたりとも創造力豊かな作曲家であ り、様々な方向性を持ったバンドをいくつも率いてきた経験を持ち、多くの場合、互いのバンドのメンバーも務めてきたからである。ふたりが共有する世界は、 なかなか足を踏み入れ難いように見える・・・。そこで名乗りを上げたのがパーカッショニストのジョン・ホレンベックで、ふたりの方も彼を迎えたトリオをグ ループとして成立させるだけの頭脳を持ち合わせている・・・。藤井のプリペアード・ピアノとホレンベック、そして田村の控え目でありながら高度なトラン ペットのテクニックが有機的に結び付いて全体を構築する。グループはアクースティック楽器しか使用していないことを謳っているが、不思議なことに電子音の ような響きが聴こえることもある。ホレンベックもまた、想像力豊かで繊細な感覚を持った作曲家であり、そうでなければこのトリオはバランスの悪いものに なっていたかもしれない。彼は自ら前に出ようとはせず、藤井の音楽を生かすべく、自身を演奏の中に埋没させることもある。そして、藤井の音楽がその本性を 発揮するのである。」–カート・ゴッシャック、オール・アバウト・ジャズ・ニューヨーク(アメリカ)

「アーティスティックな高踏やトグロのようなエモーションにオチず、不思議なほどに沸々と日常的なイメージを掻き立てる。….ビジュアルな断片が記憶の底 の物語に引き込む。」–CDジャーナル(日本)

「日本人ピアニストの藤井郷子がインプロヴィゼイションのために新しく結成したJunk Boxは、彼女の夫でもあるトランペッターの田村夏樹と、他に類を見ないパーカッショニストのジョン・ホレンベックという才人たちを擁したトリオである。 多彩で開放的な藤井の楽曲は、サウンドの質感を探るようなAACM風のものから、過激なまでに解き放たれたリズムが交錯するものまで多岐にわたり、アルバ ム『フラグメント』は驚きに満ち溢れた作品となっている・・・。普段は暗く、硬直した印象派風の音楽を打ち出している藤井郷子だが、ここでは作曲のスタイ ルを変えて、煽り立てるほど活き活きした楽曲や内面を探るような内容の音楽を取り混ぜている・・・。藤井の才能は多岐に渡っている・・・。『フラグメン ト』は、この親近感を覚えて聴き応えのある音楽において、インプロヴァイザーとしての彼女の並外れた才能をよりはっきりと浮き彫りにした作品である。」- -トロイ・コリンズ、オール・アバウト・ジャズ(アメリカ)

「『フラグメント』の冒頭を飾る「A Dream in the Dawn」は、軽やかな雨だれの音をバックにした、ためらいがちな小鳥のさえずりのようなメロディーで幕を開ける。トランペッターの田村夏樹は鳥の役割を 引き受けている、藤井郷子のピアノは雨のようだ・・・。いつものことだが、藤井と田村が手を組んだとなれば、こちらから何かを期待してはいけない・・・。 トランペッターの田村夏樹は、つまりその、いつもの田村夏樹である――鳥のさえずりを聴かせたかと思えば、歯科医のドリルを思わせるノイズを発したり (「Getting Lost on a Snowy Day」)、そうかと思えば、酔っ払ったオペラ歌手のようなヴィブラートがすかしっ屁(失礼)に変わったりする(「Your Neighbors」)。藤井も同じく予想通り、予測のつかない演奏を聴かせ、優雅に哀愁を漂わせる瞬間があったかと思えば、次の瞬間には狂乱のハチャメ チャを演じたりする。いっぽう、ホレンベックは目を見張るようなパーカッションさばきで様々な色彩を加えている『フラグメント』は藤井と田村の構想をさら に一歩進めた作品だ。」–ダン・マックレナガン, オールアバウトジャズ(アメリカ)

「(藤井は)ピアノで分厚いコードを叩きつけ、相棒である田村夏樹のぶっきらぼうなトランペットが緊張感を煽り、唸り声を上げる。そして、ドラマーのジョ ン・ホレンベックがレフリー役を買って出る。」–トム・ハル、ヴィレッジヴォイス(アメリカ)

「『ジャンク・ボックス』は新しいグループだが、メンバーはフリー・ジャズ・シーンにおいてはすでにお馴染みだ。(全員が)著名なアヴァンギャルド・ ミュージシャンで、トリオの息も合っている・・・。全体として見れば、このセッションはただのフリー・インプロヴィゼイションではなく、意味をなすもので ある。」–D. オスカー・グルームス、オーズ・プレイス・ジャズ・ニューズレター(アメリカ)

発明の母が、現代のジャズにおけるこれら3人の志の高いつわものたちに、様々な方向に展開する対話の中で様々な課題を追求する機会を与えている。『フラグ メント』では、トランペッターの田村夏樹が、エレクトロニクスを表立って使うことなく、秘技や創造力を駆使して有機的な響きを創り出している・・・。田村 はピアニストの藤井郷子が新たに編み出した“コン=インプロヴ”、すなわち構築されたインプロヴィゼイションという手法を推し進めている。そこにパーカッ ショニストのジョン・ホレンベックが輝きを加え、色彩感を添え、あるいは砕け散るようなバックビートを送り込むという形で、トリオは半ば構築された楽曲の 演奏を大いに楽しんでいる。発振するような音響を発したり、機械的な音響空間を創り出したりする田村のトランペットは、時としてアンプを通したように聴こ えることもある・・・。『フラグメント』では、トリオが知的な寛容さにくつろいだグルーヴの流れを結び付けた瞬間に、彼らの創造力のパワーが全開になる。 必携のアルバム。」–グレン・アスタリタ、オール・アバウト・ジャズ(アメリカ)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です