コンサート評

–2006年度ベストコンサート ―デヴィッド・R.アドラー、オール・アバウト・ジャズ ・ニューヨーク(アメリカ)

「彼らは素晴らしい表現形態をとっている。ダイナミックスで際立っている。シンプルなモチーフでわずかに変化させたり、燃えるような速いユニゾンで始めた り、ふたりのけたはずれのテクニックに気づく以前に、すぐさまアピールするような表現で惹き付ける。…藤井はもちろん卓越した作曲家で音楽的な思索家であ るが、私は、長い間、田村は現代のもっとも素晴らしいトランぺッターと考えている。…デュオとして、ユーモアも兼ね備えているが、私が長い年月聴いて来た 最も純粋で、時として厳しく美しい音楽を演奏する。」–ステファン・ミドルトン、ロンドン・ジャズ(イギリス)

「終わってみれば、グェルフ・フェスティヴァルの白眉はSatoko Fujii Fourのステージだった。4人は、思わず身を乗り出すような緊張感のこもった、抑えようのないエネルギーで駆り立てるような楽曲を演奏するのに相応し い、恐るべき腕前の持ち主であることを証明した。」
–マイク・チェンバレン、ダウンビート(アメリカ)

「藤井のオーケストラの構成メンバーは、ほぼ全員がニューヨークで活動するバンドのリーダーで、個々のミュージシャンは、個性も名もない一介のビッグ・バ ンド要員をはるかに超える貢献を見せた。また、藤井のアレンジは、多くの場合エラリー・エスケリンやハーブ・ロバートソン、スティーヴン・バーンステイ ン、ジョー・フィードラーといった面々に長いソロやデュオの場面を与えることで、色とりどりの個性を集団の中から際立たせた。わずか1時間強の間に、(中 略)40年代のダンスホールの音楽からジェイムズ・ボンド風のテーマ、行進曲のファンファーレ、恐怖映画のサウンドトラック、ポルカ、グローブ・ユニ ティ・オーケストラ風の大騒ぎまで、音楽は様々な表情を見せた・・・。この手のグループのものとしては意外なほど民主的なステージで、主役は藤井でも彼女 が起用した豪華なメンバーでもなく、結果として生み出される音楽だった。」–アンドレイ・ヘンケン、オールアバウトジャズ ニューヨーク(アメリカ)

「演奏するのは大変だが茶目っ気のある藤井の曲は、今年のロヴァテにおける最高の出し物だったことに疑いの余地はない・・・」–トム・ディル、シグナル  トゥ ノイズ、ROVA サキソフォンカルテット25周年記念Rovate 2002での藤井の作曲に寄せて(アメリカ)

「藤井郷子と吉田達也のデュオには、多くのファンが高い期待を寄せていたが、それが裏切られることはなかった・・・。素晴らしい耳の持ち主である藤井は、 パワフルな吉田を操る術を心得ていた・・・。全体として、ふたりは大いに楽しんでいるようだった――アンコールは何と、3分間の「イパネマの娘」だっ た!」–マイク・チャンバーレイン、シグナルトゥノイズ(アメリカ)

「日本人ピアニストの藤井は、異文化混交による独自のジャズやフリー・インプロヴィゼイションでファンを獲得しつつある。このピアニストの作曲の才能は、 インプロヴィゼイションのそれに匹敵し、ここに収められた曲は注目すべきものばかりである・・・。藤井郷子は、このカルテットを“ロック・バンド”と呼ん でいる。たしかに、通常のロックほどではないにせよ、音量は大きいかもしれない。しかしその音楽は、リーダーが常に発揮してきたインプロヴィゼイションの 見事な才能を感じさせるもので、今までに彼女が試みた中でも、もっとも目覚しい挑戦のひとつである」–アンディ・ハミルトン、ジャズレビュウ(イギリ ス)

「トランペット・プレイヤーの夫、田村夏樹を擁した、アルバム『ヴァルカン』のバンドの音楽は、ロックの感覚を帯びたアヴァンギャルド・ジャズであ る・・・そのバランス感覚とスケールの大きさは、交響楽に通じるものがある。」–ラッセル・アーサー・ロバーツ、LAジャズシーン(アメリカ)

「Satoko Fujii Fourは、音そのものを探求している。自分たちの楽器に潜む、あらゆる音を引き出そうとしているのである。」–ジョイス・コーベット、ライヴミュー ジック・レポート(アメリカ)

「日本からのデュオのこの晩のインプロにはとても夢中にさせられた。…目が覚めるように機敏で、大きな音楽だ。」–ジョン・タメイ、ジャズ・イン・ブリ ストル(イギリス)

「この注目すべきカルテットは、メディアでも大いに有望視されているが、期待をどれほど上回るかという点については、いまだに計り知れないものがある。強 烈なリズムと劇的な変化を見せるピアノが驚くような形で一体化した、嵐のような演奏には目を見張るものがあり、グェルフ・ジャズ・フェスティヴァルの歴史 においても、最高位にランクされるステージと呼ばれることになるだろう。」–エコー(カナダ)

「去る5月、Rovateで共演するRovaとの顔合わせと、初めてのSFAltフェスティヴァル出演のために、藤井と田村はベイ・エリアを訪れた。デュ オで演奏する間、ピアニストとトランペッターは、個々の楽器から驚くほど豊富な種類の音色やアタックを探り出し、様々な質感や雰囲気を創り出した。その音 楽スタイルは、トランペッターのクリフォード・ブラウンやマイルス・デイヴィス、レスター・ボウイー、近藤等則、ピアニストのビル・エヴァンスやジャッ キー・バイアード、ハービー・ハンコック、ムハル・リチャード・エイブラムス、マシュー・シップなどを含む、音楽史における様々な要素を網羅していた。」 –ダーク・リチャードソン、サンフランシスコ・ベイ・ガーディアン(アメリカ)

「このコンサートは、(藤井と田村にとって)スコットランドで演奏する初めての機会で、演奏は徹底したフリー・インプロヴィゼイションだった。二人はまず デュオで演奏し、後半では地元の3人のミュージシャンが加わった・・・。ピアニストが交互に繰り出す、打楽器的な音型や流麗な旋律には、クラシックのテク ニックの特徴がうかがわれた。田村も、トランペットで彼女に負けないほどの幅広い語法を駆使してこれに応じていた・・・。より大きな編成のグループでは、 聴覚的な面でも視覚的な面でも、国際的なフリー・ミュージック・コミュニティの伝統に則り、拡張された音の可能性を活かした、様々なインプロヴィゼイショ ンを展開していた。–ケニー・マセソン、スコッツマン(イギリス)

「これは藤井郷子と田村夏樹が初めてスコットランドを訪れた時の演奏で、2部に別れたステージでは、フリー・インプロヴァイザーとしての二人の側面に焦点 があてられていた。とりわけデュオによる演奏は、クラシック音楽やビッグ・バンド・ジャズの規律に対する幅広い興味のほどがうかがわれた・・・。二人は延 々と続く会話のようなデュエットの演奏の中で、それぞれが持つ音のパレットを非常に効果的に使いこなしていた。」–ロブ・アダムス、ヘラルド新聞(イギ リス)

「日本から来た夫婦のチームには、ただ目を見張るばかりである・・・。ふたりの作品には、あらかじめ構成された部分もある程度含まれているが、常に解き放 たれた予想もつかない展開を見せるので、その演奏は聴き手にスリルを味わわせてくれる。」–スティーブ・フィーニー、ポートランド・プレス・へラルド (アメリカ)

「不思議な響きで感覚を殺してくる。不純物の無い氷のような強烈な輝きと、女心と秋の空を思わせるようなコロコロ変わる演奏がこのグループにはあ る。….終演後、駅の公衆電話で友人にライヴの素晴らしさに熱弁を振るっていたら2時間も話してしまい終電を乗り過ごしてしまった。それだけ素晴らし かったのだ。」–三星貴幸、ジャズ批評(日本)

「瞬間的に凝縮された猛烈な勢いと荒々しいパワーに、聴き手の耳は圧倒される・・・。レコードでもそうだが、とりわけライヴにおいては、彼女の将来を見通 す鋭い眼差しと共に、その歴史感覚と過去に対する尊敬の念には、注目すべきものがある・・・この夜の演奏は、終わった瞬間に全員が総立ちで拍手を送るほど の出来栄えだった。次に藤井が来たときには、是非お見逃しなく。」–ローレンス・ドナヒュー・グリーン、オールアバウトジャズ(アメリカ)

「不協和音と意外性が織りなす音世界を展開し、観客を圧倒した。」–OCS ニュース(アメリカ)

「実験精神旺盛で、クラシック音楽に影響を受けたカルテットには、期待を裏切ってくれることを期待しよう(Satoko Fujii Four)。時として演奏時間20分を超える彼女たちの曲は、ポスト・バップ・ジャズのテクニックやスタイル、クラシック音楽その他の影響を取り入れて、 しばしばその方向性を変えている・・・。このバンドの音楽を聴く時には、懐の広さをもって臨み、度肝を抜くような複雑な音に感動する心の準備をしておくこ とをお勧めする。」–アーネスト・バーテルズ、ニューヨークプレス(アメリカ)

  「藤井のピアノは狭義な意味のジャズを超えたさまざまな音楽の反響があって面白い。….田村の最近の好調ぶりと併せて、この夫妻の活動からはますます 目が離せない。」–  悠雅彦、朝日新聞(日本)

「藤井郷子のカルテットは、どちらかと言うと作曲家の発想で音楽を作り出していた。キーボーディストの対位法的な演奏は、パーカッショニスト、ジム・ブ ラックの控えめだが豊かな創造性と、ベーシスト、マーク・ドレッサーの弓の背を使った襲いかかるような太い打撃音や風車を思わせる動きによって引き立てら れ、演奏のエネルギーは高まるいっぽうだった。そして、藤井がピアノの内部に手を伸ばし、痙攣するようなパルス音を放ち始めると、ドラマーはシンバルを弓 で擦り、トランペットが悲鳴を上げているような音でこれに応じた・・・。田村夏樹は、1970年代のマイルス・デイヴィスをほうふつとさせる、ミュートの かかったスタカートの旋律を紡ぎ出していた。」― ケンワックスマン, コーダ(カナダ)

「アメリカの聴衆は戦慄している。自由なインプロヴィゼイションと印象派的なサウンドを散りばめたCD『クラウズ』を発表した藤井が、田村とふたりでアメ リカをツアーするというのである・・・。好奇心が旺盛で、常に以前とは違う演奏を聴かせる藤井は、いつも必ず聴衆を驚かせてくれる。」—ドン・ウイリ アムソン、ジャズレビュウ(アメリカ)

「・・・ピアニストは、ドラマーの切れ味鋭い轟音に水晶のような音の断片を投げつけて楽しんでいた。藤井は吉田のパワーに合わせて、力強いフレージングや メロディックなテーマによる分厚いコードの連打、粗い質感のリズムを駆使してインプロヴィゼイションを構成しながらも、全編を通じて演奏をコントロールし ていた。創作言語による自由にさえずるようなヴォーカルを応酬したり、吉田が着ているジャケットのジッパーの音を増幅したり、挙句の果てには「イパネマの 娘」をスラッシュ風に解体したりと、ウィットの感じられるステージだった。」–マイケル・ローゼンスタイン、ケーデンス(アメリカ)

「奔放でエネルギッシュな藤井トリオの凄みを体感する。」–杉田宏樹、スイングジャーナル(日本)

「ピアニストの藤井郷子が日本から連れてきたカルテットは、風変わりな“荒々しさ”を帯びたインプロヴィゼイションを聴かせた――彼女はクラシック音楽を 背景に持つが、トランペット・プレイヤーの田村夏樹はジャズ畑の出身で、エレクトリック・ベーシストの早川岳晴は“プログレ・ロック”の経験を持ってい る・・・。彼女が、大物になることを予感させる、非常に興味深い個性的な存在なのは間違いない。」–フランシスコ・マルティネリ、コーダ(カナダ)

「藤井の曲は難しいとよくミュージシャンは言うが、奔放さを引き出し、許容する自由な空間に繋がっている。…藤井は作曲の才と豊かなイマジネーション でその場を司る。」–横井一江、ジャズ批評(日本)

「すでに5枚のCDを発表しているトリオは、互いのプレイやサウンドがどう変化しようと、自在に即応しながらクライマックスへと導く術を心得ている。自由 な精神の発露が聴き手の心をも解放する。….分けても重層的なサウンドを生みながら四者の物語が一つに収束して終結部へと突入するスムーズな流れが快 感だ。」–悠雅彦、朝日新聞(日本)

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